ザ・MUSEUM/System/UI Design
[インタビュー]
都市型水族館「AOAO SAPPORO」
伴走するDX部隊

Domein
Start Up / Museum DX / Marketing / Branding / System Consulting
Service
IT×Creative / マーケティングシステム / 館内システム
VALTがシステムDX部隊としてお⼿伝いさせていただいた札幌の都市型水族館 AOAO SAPPORO。
今回は、⽔族館新設に関わるシステム構築のクライアントインタビューをお送りします。いかにして⽔族館の「こまった」を「よかった」に変えたのか? その全貌が明らかに!?
、、、という真面目な話はさておき、とにかくペンギンちゃんが可愛いので、それだけでもぜひご覧になってください!

“水族館”の概念を覆す、挑戦する水族館。
さて、今回は、、、
ジャン!!!
可愛いペンギンがいる札幌の⽔族館、AOAO SAPPOROにやってきました!⾶⾏機の移動で疲れた⾝体に癒しを与えてくれる、尊い存在、、、。
それでは早速、AOAO SAPPOROのシニアマネージャー加藤さんにお話をお伺いします。
- 神里亮人(以下、神里)
- 今回はよろしくお願いします!
- 加藤(以下、加藤さん)
- こちらこそよろしくお願いします。
早速ですが、まずはAOAO SAPPOROについてざっくりと教えていただけますか?
- 加藤さん
- わかりました。
「AOAO SAPPORO」は、既成概念にとらわれない新しい⽔族館です。⽣物と⼈が向き合う時間を⼤切にし、それを通じたコミュニケーションを⽣む施設で、「世界⼀の⽔族館」を⽬指しています。
- 神里
- せ、世界⼀、、、すごく壮⼤な⽬標ですね。でもなぜ札幌に??
- 加藤さん
- 実は現在の⽇本だと、⽔族館を⽴ち上げて成功を狙える場所はそう多くありません。その点において「札幌」は⼀定の観光需要もあり、⾼いポテンシャルを持っています。そこに新しい⽔族館を設⽴することには⼤きな意義があります。
- 神里
- 札幌って観光客も多いし、地元の⼈にもデートスポットとして重宝されそうですよね。⼥性が好きそうな雰囲気ですし。
シロクマベーカリー&で注文できる「AOAOスパークリング」と「サッポロクラシック」
- 加藤さん
- そうですね。⽴地としては最⾼だと思います。
札幌でも1、2を争うベストな場所に「AOAO SAPPORO」を⽴ち上げられました。
- 神里
- 確かに札幌駅から徒歩圏内にありますもんね。
周りにはご飯が美味しいお店やお⼟産屋も沢⼭あるし、観光客も⼊りやすそう。
- 加藤さん
- ただ、都市部は制約が多く、コロナの影響で社会情勢も⼤きく変わっているため、難易度が⾼いプロジェクトだとは思っています。気は抜けませんね。
- 神里
- 最⾼の⽴地・最⾼の展⽰に加え、油断のない運営陣。
この⽔族館、死⾓がない、、、。
5階のコワーキングエリア。スッキリとした空間で仕事が捗る!
ズバリ、AOAO SAPPOROの推しポイントを教えてください!
- 加藤さん
- 「AOAO SAPPORO」の特徴は、「⽔族館という施設そのものの概念を⾒直す」という思想のもと、「世界3か所⽬の常設展⽰となるネイチャーアクアリウム」や「広⼤な海の世界を再現したデジタルアート」の設置など、新たな挑戦をしていることです。
座りながら、寝そべりながら。自由なスタイルで時間を過ごせる
- 神里
- 確確かにネイチャーアクアリウム感動しました!
アクアデザインアマノとコラボして⽴ち上げたんですよね?
実はアクアデザインアマノを昔から知っていたので、密かにテンションが上がっていました。
- 神里
- 洗練された雰囲気で「これは本気で世界⼀を狙っているな」と思いました。
- 加藤さん
- ありがとうございます。
とはいえ世界⼀の⽔族館になるには、まだまだ⾊んな課題をクリアする必要があります。
持続可能なマーケティングシステムの実現
世界一の水族館へ、課題は何ですか?
- 神里
- 僕から⾒ると完璧に⾒えますが、例えばどんな課題があるんですか??
- 加藤さん
- ⼤きな課題感といえば「ITリテラシー」ですかね。
既存の概念にとらわれず、常に新たなチャレンジを続け、施策の成果を正しく検証するには、どうしても「データ」が不可⽋です。
でも、チーム内にはITの専⾨家が不在だったため、システム設計や導⼊などに関してどうしたらいいか頭を抱えていました。
- 神里
- なるほど。確かにITって難しいイメージがありますもんね。
- 加藤さん
- はい。それに⽔族館運営ではマーケティング⾯でも課題があります。「館運営がイベント依存の集客モデルになってしまう」とまずいんです。
- 加藤さん
- 例えば、芸能⼈を呼んでメディアに露出したり、「○○で⽇本⼀の⽔族館」といった話題性を作ることですね。
話題性を作ることは集客において確かに有効ですけど、そこに依存してしまうと「特別な話題性がなければ集客できない⽔族館」になってしまいます。
- 神里
- 話題性がなくても集客できたら、確かに最⾼ですよね。
- 加藤さん
- はい。イベント依存だと、より⼤きなニュースを⽣み出し続けないと世間が振り向かず、⽣き物にも⼈にも⼤きな負担をかけるマーケティングになってしまうんです。
「持続可能なマーケティング」を実現するためにも、⽔族館では⼤規模なイベントや企画を⽴案するだけではなく、⽇常的に細かい顧客分析を⾏うことも重要です。
- 加藤さん
- 購買⾏動、来場時間、来場者の⽅々の属性などの細かいデータですね。それを集めて分析し、⼩さな改善や最適化を積み重ねることで、施設全体における集客⼒のベースアップを狙っていきます。
⽇々の改善活動の中で、ときおり無理のない話題性を⽣み出し、持続可能なマーケティングが実現できると嬉しいです。
- 神里
- データを中⼼とした⽔族館運営って、もしかしてめちゃくちゃ最先端じゃないですか!?
- 加藤さん
- そうかもしれませんね。
業界全体として、ITがうまく活⽤されていないところは多いんじゃないかと思います。
現在、多くのミュージアムが、細かく顧客分析できていません。
AOAO SAPPOROではその課題を解消して、業界全体が改善するための起点を作っていきたいです。
- 神里
- 確かに顧客分析を徹底して改善を積み重ねたら、いよいよ世界⼀が現実味を帯びてきますね。
- 加藤さん
- はい。ただし注意すべき点があって、ただ顧客分析のためのシステムを導⼊するだけではダメだと考えています。
⼤切なのは、担当者だけがデータを⾒るのではなく、メンバー全体がデータに興味を持ち、みんなで品質向上に取り組む⽂化を作ることです。その⽂化を実現するためにも、全員で数字を共有し、全員が改善活動に参加できるようなシステムが必要だと考えています。
システム導入にあたって困っていたこと
システムを導⼊するにあたって、困ったことはありましたか??
- 加藤さん
- 私たちが直⾯していた課題は、「⽔族館運営を成功させるためのアイデアを持ちつつも、実現する具体的な⽅法がわからなかったこと」です。実は「このサービスとこのサービスを組み合わせたら、⾯⽩いことができそう」というアイデアはすでに持っていました。
しかし、その実現⽅法がわからなかったのです。
- 神里
- 確かにその辺りは専⾨家じゃないと考えるのって難しいですよね、、、。
- 加藤さん
- はい。加えて、アイデアを実現するためのシステム構築は、10社近くの業者とのやり取りやスケジュール調整が必要なため、時間や労⼒⾯で膨⼤なコストがかかります。
- 加藤さん
- はい。AOAO SAPPOROは開業準備で忙しい時期ということもあり、リソースが限られていたため、社内でシステム導⼊に対応できる⼈材を確保できませんでした。
つまり、“地図”はあっても、それを具現化するための“道筋”が⾒えない状況だったのです。
VALTをパートナーに選んだ理由
なぜVALTに依頼しようと思ったのでしょうか?
- 加藤さん
- 代表の中定さんを知っていたこともあり、VALTには以前から好印象を抱いていました。
システムを導⼊する際には、機能⾯だけではなく、デザイン、使いやすさ、遊び⼼も⼤切なように思います。
その点において、VALTは優れたパフォーマンスを発揮している印象がありました。
- 神里
- なるほど!
ただのシステム屋では満⾜できないということですね!
お⽬が⾼い!男前!!!
- 加藤さん
- いくら良いシステムを導⼊しても、組織内で「システムはよくわからないし難しい」という認識になってしまうと、「担当者だけがデータを理解して他のメンバーは無関⼼」という状況になってしまいます。
それだと全員が⼀丸となって、サービスの品質を向上させるのは難しいです。
システムを少しでも⾝近なものにし、数字やデータにみんなが興味を持てるようにするには、ただスキルが⾼いだけのエンジニアではなく、VALTのようなチームと取り組むことが⼤切だと考えました。
- 加藤さん
- 私は以前、別のシステムをVALTに作ってもらった経験があり、相談したところ全⼒で取り組んでいただけたのを覚えています。
その経験から、今回のような「詳細な顧客分析を⾏い、⽔族館運営の質を上げていく」という難易度が⾼いミッションでも、VALTに依頼すればやり遂げてくれると確信し、依頼することに決めました。
ミッションは「システム界のお笑い芸人」⁉︎
今回、VALTに課したミッションとはどのようなものだったのでしょう?
- 加藤さん
- 「単純にシステムを導⼊する」ということだけではなく、「複数のステークホルダーとうまくコミュニケーションをとりつつ進めていく」という、プロジェクトマネジメントも含めての依頼をしました。
取引するベンダーも多数いたため、その調整業務はとてもハードだったと思います。
- 神里
- 確かに、VALTメンバーもとても⼤変そうでした。(他⼈事)
- 加藤さん
- AOAO SAPPOROがVALTに期待していたことは、単にシステムを作るだけでなく、楽しくプロジェクトマネジメントしてくれることです。
⽔族館⽴ち上げのための準備段階だったので、暗い雰囲気は全体の⼠気に関わります。
現場を明るい雰囲気にしてくれることを、VALTには密かに期待していました笑
- 神里
- なるほど、システム界のお笑い芸⼈のようなポジションですね。
- 加藤さん
- ま、まぁそんなところです。
実際にVALTがプロジェクトに加わってからは、システム導⼊の⾯でパフォーマンスを発揮してくれるだけではなく、ビジネスに関する研修会まで開催してくれました。「こんなところまで⼊ってくれるんだ」と驚いたのを覚えています。
それにいつも明るい声で現場の雰囲気を盛り上げてくださり、精神的にもとても助けられました。
「ただ作って終わり」ではなく、「世界⼀の⽔族館を⽬指す仲間」としてプロジェクトに関わっていただけたと思います。
プロジェクト完了後のVALTへの評価、VALTの強み
実際にVALTに依頼してみてどうでしたか?
札幌大通水族館プロジェクトチーム。VALTも掲載いただきました!
- 加藤さん
- 本当にお願いしてよかったです。
最初は「難しい依頼で本当にできるのかな?」という不安もありました。会う⼈会う⼈に「システム⼤丈夫なの?」と聞かれたりもしていたので。
- 加藤さん
- 正直言うとそうです。
でも、VALTがプロジェクトに加わってからの働きを⾒ていく中で、改めて「必ずやってくれる」と思いました。
かなり⼀⽣懸命に動いてくださっていたので。
- 神里
- ほほう、うちのメンバーなかなかやりますね。(他⼈事)
- 加藤さん
- そしたら予想通り、ちゃんと有⾔実⾏してくださって、プロジェクトの最後まで⼀緒に⾛り抜けていただけました。
おかげで顧客データも細かく取得できるようになり、描いていた“地図”も現実味を帯びてきて「やっぱりすごいな」と。
凄くいい形で組織に⼊り込んでいただけ、嬉しかったです。
世界⼀の⽔族館への道筋が⾒えてきたので、これからも⼀緒にサービスの品質改善に取り組んでいけたらと思います。
加藤さんが思うVALTの強みは何ですか?
- 神里
- 加藤さんが思うVALTの強みは何でしょうか?
遠慮せず褒めてください。
- 加藤さん
- どストレートですね。でも強みは明確だと思います。
VALTはシステムを作って終わりではなく、プロジェクトマネジメントやステークホルダーとの調整も含め、まるまるお願いできる点が強みですね。
- 加藤さん
- (ぐいぐいくるな、、、。)
こういう類のプロジェクトは、⼀部の⼈間だけで⾛ってしまい、現場で拒絶反応が起きて、スタッフがシステム嫌いになるケースもあり得ます。
しかしVALTは全体を⾒てくれ、現場の⾊んなスタッフとも仲良くしてくれたため、皆がデータに関⼼を⽰してくれました。期待していた通りに「楽しいプロジェクトマネジメント」を実現してくれたんです。
全体最適を意識し、ここまで並⾛してくれるエンジニアチームはなかなか無いと思います。
- 神里
- やっぱうちのチーム最⾼ですね!!!(⾃画⾃賛)
AOAO SAPPORO ⼭内將⽣ 館⻑からのコメント
VALTは戦友。
⼀緒にリスクがとれる、逃げたり、後ろから撃ったりしてこない仲間です。
今回のシステム構築では、コスト⾯やスケジュール⾯などの制約を受け⼊れつつ、こちら(発注者サイド)の担当者の⼈間関係や将来の夢などを与件として取り込んで、幅の広いプロジェクトマネジメントをしていただけました。
気持ちが⼊ったよいものができたと考えています。
今後、VALTへ期待すること
- 神里
- 今後、VALTへ期待することを教えてください。
- 加藤さん
- 「ミュージアム運営において、テクノロジーやマーケティングがうまく活⽤されていない」という業界全体の⼤きな課題を、VALTと⼀緒に解決していきたいです。
- 神里
- おぉ〜、壮⼤なビジョンですね。でも楽しそう!
- 加藤さん
- ありがとうございます。
動物園や博物館などのミュージアムは、テクノロジーやマーケティングがまだまだ浸透していません。
しかし、ひとつひとつの施策がより良い成果を上げるには、テクノロジーやマーケティングに対する理解が必須です。
- 神里
- 今の時代、ちょっと油断するとすぐ時代の変化に置いていかれますもんね、、、。
- 加藤さん
- はい。新しいことにどんどんチャレンジしていかないと、⽣き残りは難しくなってきています。
なのでシステムに関しても、作って終わりではなく、必要なデータや分析⼿法に合わせて継続的にアップデートしていく必要があります。
「こういう数字が欲しいからこういう仕組みを作ろう」など、VALTメンバーとわいわい話しながら⼀緒にサービス改善していけたら嬉しいです。
勝⼿ながら、VALTはAOAO SAPPOROのDX部隊だと考えています。
さいごに
- 神里
- 最後に⼀⾔、かっこよくビシッと決めちゃってください!
- 加藤さん
- すごくやりづらいですね。
では最後に今後の展望をお話しさせてください。
AOAO SAPPOROがグランドオープンした2023年7⽉20⽇は、⼀つのゴールでもあり、新たなスタートでもあります。⽴ち上げ前には多くの仮説を⽴てました。
その仮説が合っているかどうかが、これからどんどん結果となって返ってきます。
「展⽰の⾼さは適切か?」
「ネイチャーアクアリウムは本当に感動を与えているか?」
「ペンギンのブロックの形状や⾼さは適切か?」
こんな感じで、得られたデータを元に様々な⾓度からひとつひとつ検証を重ねて、サービスの品質改善に繋げていきたいです。
札幌という⼟地にAOAO SAPPOROを⽴ち上げたことに対し、VALTも含めチーム全体で向き合っていけたら嬉しく思います。
- 神里
- ありがとうございます!
こちらこそ、今後もぜひ宜しくお願いいたします!
加藤 郁理
Kato Ikuri
1987年⽣まれ
2006年 京都⼤学農学部 資源⽣物科学科⼊学
2008年 森林科学科転⼊
2010年 京都大学院農学研究科 環境デザイン学研究室
2012年 オリックス⽔族館株式会社⼊社
- ⽔族館の現場での企画業務
- 新規施設の開発検討業務
- マーケティング業務 など
2017年 公益社団法⼈京都市観光協会
- インバウンド向けコンテンツの制作やマーケティング業務
2021年 UDS株式会社 事業企画部 マネージャー
- ミュージアム、テーマパーク、コワーキングスペース、まちづくりなどの事業企画業務
2022年 株式会社⻘々 シニアマネージャー
- 都市の中での⼈と⾃然との良い関係・接点を考える・・・というのが現在のやりたいこと
神里 亮人
Yoshito Kamizato
- マーケター / Webディレクター(4年)
- 医療系ベンチャー企業エンジニア(1年)
- SESエンジニア(1年)
- 医療機器メーカー研究開発員(5年)
研究職からエンジニアに転職し、現在は地元沖縄でマーケター兼Webディレクターとして活動中。
趣味はウォーキング・愛猫とまったり過ごすこと。